パッケージに適した紙とは
オリジナルパッケージをつくる際、みなさんはどのようなポイントで素材を選んでいますか?
ザ・パックが製造するパッケージの多くは、「紙」素材を使用しています。
ひとくちに「紙」といっても、新聞や雑誌、広告などに使われる紙、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどに使われる紙、紙袋や紙箱、段ボールなどのパッケージに使われる紙など、その種類や用途はさまざまです。
日本製紙連合会によると、情報・広告分野のデジタル化やペーパーレス化の影響で、新聞用紙や印刷・情報用の紙=グラフィック用紙の国内需要が減少しており、コロナ禍を契機にその勢いはさらに速度を増しています。
一方、パッケージに使用される紙の国内需要をみてみると、2年連続のプラスが見込まれています。その要因としては、コロナ禍による新しい生活様式が浸透したことや人々の環境意識が高まっていることなどが挙げられます。
EC市場の拡大を受け、段ボール原紙の需要は増加、脱プラスチックによる紙化の動きにより、菓子や化粧品、食料品の箱などに使う白板紙も需要が増加する見通しです。特に、持ち帰り用の食品を入れるパッケージに用いられる紙の需要が高まると予想されています。
参照:日本製紙連合会「2022年 紙・板紙内需見通し報告」(参照日2022年3月9日)
紙製パッケージの需要が高まるなか、「紙製のパッケージをつくりたいけれど、適切な紙がわからない」「使う紙はどうやって選べばいいの?」と悩まれている企業様も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、紙袋や紙箱(紙器)を中心に、パッケージに適した紙についてご紹介します。
紙袋に使用する紙
紙袋に用いられる紙は、「洋紙」に分類されます。
洋紙とは、木材やサトウキビをはじめとする植物から繊維を抽出し(パルプ)、均一に広げたパルプを乾燥させて固めたあと、印刷に適した状態にするために、表面に光沢を出したり、なめらかにしたりする加工を施すことでつくられた紙のことです。
洋紙のなかには、新聞に用いられる「新聞用紙」やトイレットペーパーやティッシュペーパーに用いられる「衛生用紙」なども含まれますが、紙袋は主に「印刷・情報用紙」「包装用紙」に分類される洋紙を用いて製造されます。
「印刷・情報用紙」「包装用紙」のなかにもさまざまな種類がありますが、ここでは、比較的よく用いられる紙3種類と、昨今人気が急上昇中の紙1種類のあわせて4種類をご紹介します。
(1)コート紙
「コート紙」とは、紙にコート剤を塗ることで表面を滑らかにし、光沢感を出した紙です。インキののりがよく、写真や色の再現性に優れている点が特長です。
印刷をきれいに施したい場合に最適な紙ですが、紙袋として使用する場合には「PP貼り=ラミネート」が必須です。フィルムを貼ることによって表面をカバーしないと、折り曲げた部分にのせたインキが、コート剤の層と一緒に割れてしまうため、注意が必要です。
(2)片艶晒クラフト紙
「片艶晒クラフト紙」とは、片面をプレスすることで表面を平滑にした、片面にやや光沢感がある紙です。比較的安価ながらも、印刷適正が良いのが特長です。
(3)晒クラフト紙・未晒クラフト紙
「クラフト紙」とは、表面に塗工やプレスが施されていない、ざらっとした風合いの紙をさします。
「晒クラフト紙」は、漂白されたパルプを用いてつくられるため白色で、「未晒クラフト紙」は、漂白していないパルプを用いてつくられるため茶色になります。
未晒クラフト紙は、原料の繊維が長く、漂白するための薬品などを使用していないため、強度が高く丈夫な点が特長です。昨今、消費者の環境意識が高まっている影響もあり、ナチュラルな風合いでエコ感を演出しやすい未晒クラフト紙の人気が急上昇しています。
また、未晒クラフト紙同様に、「環境に優しい紙」として人気を集めている紙があります。それは、「古紙含有率の高い紙」です。ザ・パックでもさまざまな古紙含有率の高い紙を取り扱っていますので、なかでも特徴的な紙をひとつご紹介します。
(4)酒パックRC
「酒パックRC」とは、酒パックリサイクル促進協議会が構築した、「酒パック循環型リサイクルシステム」によって回収した酒パック※の工場損紙=使えなくなった紙を70%配合した紙です。
※内側が銀色でアルミが貼り付けてある紙パック
古紙含有率が高い紙ならではの、ざらざらとした表面と柔らかい風合いをもつため、パッケージを手にした消費者に、わかりやすく「エコ感」が伝わります。一方、表面に凹凸があることから印刷ののりが悪く、かすれやすいというデメリットもあります。
そのため、この紙をご使用いただく際は、ロゴのワンポイント印刷のみなど、素材の風合いを活かした、印刷面積が狭いデザインをおすすめしています。
ザ・パックでは、「環境に優しい紙」が注目を集めるようになる以前から、その開発に力を入れてきました。なぜなら、冒頭にも記載した通り、私たちの製造するパッケージの半分以上は紙からつくられているためです。
紙を取り扱うメーカーとして、紙の原料となる木や、木が育つ自然環境、さらには自然のなかで暮らす生き物もすべて守っていかなければ、私たちに未来はありません。パッケージメーカーとして、永続的に地球と共存していく道を模索すべく、日々開発に取り組んでいます。
廃棄物を混ぜ込んだ紙や森林環境保全に直接貢献できる紙など、SDGsの目標達成につながる素材についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
【SDGs対応】パッケージで社会貢献!付加価値が高いおすすめの素材 その1
【SDGs対応】パッケージで社会貢献!付加価値が高いおすすめの素材 その2
紙箱(紙器)に使用する紙
紙箱(紙器)には、紙袋に使用する紙よりも厚みのある「板紙」を使用します。紙箱の形状や大きさによって適切な厚みはそれぞれですが、190g/㎡~600g/㎡程度の厚みの紙を用いることが多いです。
板紙は一般的に、薄い層を何層にも重ね合わせる「多層すき」によってつくられます。そのなかで、「原料となるパルプがバージンパルプか古紙を含むか」、また、「表面にどのようなコーティングがされているか」によって、種類が細かく分けられています。
紙箱の素材として、もっともよく使用されている板紙は「特殊白板紙」です。特殊白板紙とは、両面が白く、片面に印刷効果を上げるための白色の塗工が施されている板紙です。
特殊白板紙のなかでも、100%バージンパルプを使用したものは「特板アイボリー」、中間の層に古紙を使用したものは「特板カード」と呼ばれています。特に古紙配合率の高い「カードB」と呼ばれるクラスの板紙は、コストが低いわりに見た目も良く、紙箱の素材として多く用いられます。
紙箱を製造するうえで、紙を選ぶ際のポイントとしては、見た目や手触り、強度、コストなど、さまざまな点がありますが、もっとも注意しなくてはならないポイントは「使用条件に適した紙であるかどうか」という点です。特に、食品を直接入れる紙箱の場合は、注意が必要です。
たとえば、テイクアウトした調理済みの食べ物を入れる紙箱について考えてみましょう。
そのまま電子レンジで温めることを想定する場合は、原料に古紙を含んだ紙を使用することができません。レンジアップの際、古紙の臭気が発生する恐れがあるためです。
また、餃子などのように油分や水分を多く含み、それらが原紙に染み込むことが想定される食品を入れる場合も同様で、古紙を配合した紙を使うことは適切ではありません。
上記2つの例のような場合は、バージンパルプ原料100%でつくられた「特板アイボリー」クラスの紙を用いることが求められ、さらにそのなかで、耐水・耐油機能がついた機能紙を用いることが必要です。
このように、紙箱を食品用途として活用する場合は、「安全性」が第一に求められます。
上に例として挙げた注意点はほんの一部にすぎません。中身の特性・使用条件にあわせて最適なものを選択することが重要です。
紙箱(紙器)に使用する紙の選び方については、こちらの記事でもご紹介しています。
【化粧箱】商品の魅力を倍増させる紙素材の選び方
紙自体に機能がついていない場合であっても、表面加工などによって耐水や耐油性をもたせることで、機能紙の代わりに用いることも可能です。
表面加工を用いて高い耐水性や耐油性を付与するためには、紙の表面に薄いプラスチックフィルムを貼り付ける「ラミネート」加工を施すことが一般的です。しかしながら、昨今、環境意識の高まりから、「脱プラスチック」が求められるようになり、様子が少し変わってきました。
表面加工においても、「脱プラスチック=脱ラミネート」の動きが拡がっているのです。
ザ・パックとしても、より環境に優しい表面加工をみなさんへご提供すべく、バイオマス素材のフィルムや、非プラスチックでありながら高い機能を付与できる表面加工剤などの開発に取り組んでいます。
まだまだ開発途上ではありますが、最新の情報をこちらのブログでも発信していきますので、ぜひご期待ください。
パッケージづくりにおける紙選びのポイント
ひとくちに「紙」といっても、その用途は何か、また、パッケージに使用する場合でも、紙から「袋」をつくるのか「箱」をつくるのかによって、適した紙が異なります。さらに、その紙からできたパッケージの中に入れるものによっても、適した紙は変わってきます。
パッケージに用いられる素材にはさまざまな種類がありますが、そのうちのひとつである「紙」にも多様なバリエーションがあり、奥深い世界であることをご理解いただけたのではないでしょうか。
「何をつくりたいか」「何を入れたいか」「どのような風合いを出したいか」「どのような印刷を施したいか」「どのように使いたいか」「消費者にどのようなイメージを与えたいか」など、さまざまな条件をヒアリングしたうえで、どの「紙」が最適なのかを総合的に判断し、ご提案すること。それが私たちの役割です。
「中身の商品は決まっているけれど、どの種類の紙が適切なのかがわからない」という方は、ぜひ一度ザ・パックにご相談ください。ご要望やお悩みにあわせて、最適な紙をご提案いたします。
総合パッケージメーカーであるザ・パックは、お客様が考える課題に向き合い、パッケージを通して解決するアイディアをご提供します。
具体的な課題、ご相談やご要望をお持ちの方は、お手数ですが商品お問い合わせまで一度ご連絡ください。
これからも「つつむを知る」では、他のコンテンツでは発信できないパッケージの最新トレンドや、パッケージ製作をご検討中の皆さまの役に立つ情報を色々とお伝えしていきます!
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